公開: 2021年11月27日
更新: 2021年12月1日
アクレディテーション(Accreditation)制度とは、大学における専門教育の質を、第三者機関が査察し、認証する国際的に定められた制度である。ここで言う「教育の質」とは、大学で実施している専門教育を学んだ人材が、専門家として社会が期待している知識をもち、専門家として仕事に従事することができることを意味している。
日本社会においては、文部科学省が導入した、大学基準協会による大学認証制度がある。この大学認証制度との違いは、アクレディテーション制度が、大学が専門家人材を正しく輩出しているかどうかを問題にするのに対して、大学基準協会による大学認証制度では、各大学における教育が、大学に期待されている教育をしっかりと実施できているかどうかを問題にしている。
中世にヨーロッパ社会で確立した専門家の組織である「ギルド」は、専門家が、それを職業とする職人や技術者が本当に専門家であるかどうかを認定する制度でもあった。親方衆が運営する「ギルド」組織に属していることが、専門家としての能力をもつ人材であることの証明になる。これは、大学の教員も同じである。そのような中世からの慣習を引き継いで、米国社会で確立されたのが、「アクレディテーション」制度である。
ある大学の学部学科の教育を受けた人材が、実社会において、社会が専門家に期待する専門知識や経験をもち、一人前の技術者として職務を遂行できるかどうかを見極める。そのために、専門教育課程が目的とする育成すべき人材像の妥当性、教育プログラムを構成するカリキュラムの内容、各科目を担当する教員の経歴から見た妥当性、学生の単位認定の基礎となる基準の妥当性、その教育カリキュラムを修了した人材の社会での活躍などが評価される。
カリキュラムの精査では、専門家の教育に必要な標準カリキュラムに準拠した教育が実施され、妥当な単位認定が行われていること、教育内容に必要な演習・実習が含まれており、学生に長期のインターンシップを課していること、さらに、専門家として生きるために求められる職業倫理を教え、一定の時間を満たす、教員による講義が行われており、学生はその講義にしっかりと参加していること(contact hours)の保証などが調べられる。
これまでの日本社会における大学の技術者教育では、「標準カリキュラム」が完全に教育されていないこと、講義を担当する教員に実社会での実務経験が不足していること、単位認定基準が明確に決められていないこと、学生に対して長期のインターンシップを課していないこと、講義において学生と教員との対面時間が基準を満たしていないこと、職業倫理の教育が不十分であることが指摘されている。
大場 充著、「ソフトウェア技術者: プロの精神と職業倫理」、日科技連出版(2014)